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男はつらいよ 寅次郎わが道をゆくのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

45作目『寅次郎の青春』まで観たところで過去作を振り返っていると、なぜか21作目の本作だけ観ていなかったことに気が付き、休日の今日を使ってすかさず鑑賞。

今回は寅さんの恋愛模様もそうだけど、それ以上に紅奈々子の舞台女優として生きるのか、ひとりの女性として生きるのかという葛藤に心を動かされた。これは映画を仕事にしている自分にも通ずる問題で、映画を取るのか、他の幸せを取るのか、、これは実に難しい問題である。映画を取れば自分の人生の多くを犠牲にしなければならないし、一方で他の幸せをつかむために映画のない人生を歩むことなど自分にできるとは思えない。そりゃあ、両立できるのが理想だが、あくまで理想に過ぎなくて、現実はそれほど甘くないのである。特に本作が作られた時代は今以上に女性の生き辛い世の中で、それゆえに紅奈々子の辛さを身に染みて感じることができる。

寅さんはそのことを分かっているから、彼女の幸せを願いながらも、踊りをやめてはならないということを言い残して旅に出たのだろう。どこまでも馬鹿が付くほどまっすぐな寅さんは自分の憧れだ。あんな粋な人間に私もなりたい。さあ、寅さんと会えるのもあと5作品。これで心置きなく、最後まで観ることができそうだ。
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