青二歳

夜の河の青二歳のレビュー・感想・評価

夜の河(1956年製作の映画)
4.1
吉村公三郎初カラー。"ろうけつ染"の鮮やかな色味を映す大映カラー。京都染屋の娘山本富士子30歳。老父東野英治郎に負けぬ腕前。家のためか今まで縁談を退けてきた。美大生川崎敬三に想われたり小沢栄太郎に下心満載で狙われているが「うちの恋人は比叡山や」と嘯く。しかしてこの美女が恋に落ちた大学教授上原謙には妻子がいた。
いやぁ上原謙ったらゲス不倫。でもフィクションだから、そして何より…弩級のイケメンだから他人事として物語として観れる。不倫ものなので男女どちらに立つかで映画としての見応えが変わる。どちらの視点も楽しめば旨味も増します。上原謙をゲスで片付けるのも惜しいんですよ。妻の闘病に係る看病疲れと夫婦生活がもう少し語られれば。女側で見ると山本富士子が経済的自立に踏ん張るところがいい。

すけべオヤジ小沢栄太郎も三枚目がいい役どころだけど、その野暮天ぶりといい対比の同業者に山茶花究。彼の関西言葉ってなんて粋でかわいいんだ。そして東野英治郎…これまた本当に居そうです、町工場の職人爺さま。

鴨川の川床での宴会(小沢栄太郎がぶち壊す)がまぁ洒落てる。夏着物いいなぁ。女染色師の物語だけあって相変わらず大映の着物はいい。色の出し方について…はまぁ大映らしい濃さなんだけど、ちょっとやり過ぎで可笑しい。吉村公三郎班のウキウキが伝わってくるような。特に赤はやり過ぎ。またそれがいいんだけど。ラストでろうけつ染の赤とメーデーの赤旗までやられちゃうと笑うほかない。
そしてカリエス。明治の文学的病といえば結核、昭和はカリエス登場率高し。
青二歳

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