教授

JUNO/ジュノの教授のレビュー・感想・評価

JUNO/ジュノ(2007年製作の映画)
-
16歳の女の子の予期せぬ妊娠。

という題材になると、とても重くなり、どうしても「社会派」な内容になりがち。
そんな常道を外して、良いことや正しいことを何一つ言わずに…だからこそ素晴らしい映画になっている。

「スーパー!」を観てエレン・ペイジがとても魅力的だったので観てみたのだが、やっぱり本作でも魅力的。
バカっぽいけどユーモアを持って色んなことを感じとってもいるし、また、色んな部分が欠落もしてもいる。
しかし10代の危うさや成長の伸びしろも、表情だけでしっかり演じている。
マイケル・セラ演じる彼氏(?)もどこから見てもポンコツにしか見えないのに実は?みたいな展開は丁寧につくられているし、J・K・シモンズはじめ周囲の大人たちの描写も、現実を突きつけがちな題材なのに、良い意味で、この主人公のジュノの成長を愛でている。

ジェイソン・ベイトマン演じる養父とサブカル談義に興じる姿は大変な高揚感と多幸感に包まれる。

毒っ気があるようで、実にハートウォーミングな完成度の高い、そして美しい映画。

追記。
本作で言及されるべきところ。
自分で腹を痛めた子供を16歳とは言え簡単に手放せるのか、問題。

それは、本作の脚本家であるディアブロ・コーディの視点は重要だと思っていて。
劇中で、語られているように「愛を知る」というプロセスが逆だった、というところ。最初にセックスがあった。だって自分で自分がわからないわからないのが16歳だし、わからないからセックスをすべきではない、と偉そうに言われてもするものだ。

そしてジュノは妊娠後も(というかそこしか描かれないが…)表向きは苦悩など一切を見せない。自分に起こった現実に対して粛々と行動する。最初から、自分の行動がわからないのだから、子供のことだって実感はわかなかったはずだ。

しかし。本作が素晴らしいのは、登場人物たちが皆、モラルによって人を裁くのではなく、常識を説くのではなく、やはり起きている現実に対して粛々と行動するところにある。
J・Kシモンズの父親は人生に失敗はつきものだと教えるし、継母のアリソン・ジャネイも、仲など特段良くなくても常識ぽいことを言いたがる無責任なレントゲン技師にキレたりとジュノを守っている。
その無駄に家族自体の呪縛がないのに、それでも健全に繋がっている家族だからこそ「居心地がいい」と気付き。
だからこそ、養母には、託したかったのではないかと思うのだ。
自分は16歳で現実的には育てられないけれど、彼女が母親になり、子供を愛してくれることに対して「彼女なら」と託せるほど、ジュノは「愛する」ということの深さを知ったのだと思う。
そう思えるほど、人生に間違いはあっていいし、それも含めて、揺るぎないものがあるのだということを学んだ、のだと思う。
教授

教授