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袋小路のpikaのレビュー・感想・評価

袋小路(1965年製作の映画)
5.0
愛しのフランソワーズ・ドルレアック!映画の1/4は裸なんじゃと思っちゃうくらいの脱ぎっぷりが麗しい笑。あんな美と肢体が目の前にあればカメラに収めたいと思うのは自然なことだとかなんとか。それにしてもポランスキーは女優を撮るのがめちゃくちゃ上手い。役に押し込めず役者の人格をそのまま個性として活かしているような、身悶えするほど美しく印象的な仕草ひとつひとつが映画の魅力へとさらに高められている。ドルレアック以外の役者陣も負けず劣らず皆非常に良い顔をしていて、片腕を怪我した粗暴な大男の憎めないキャラ、ハケでメガネで半裸な旦那は初っ端から妻に女装をさせられる情けなさ、大男の相棒は顔だけで存在感を発揮していると言いたくなるくらい目をカッ‼と見開いた顔のインパクトが強大。手と足が麻痺して固まった姿など死体そのものにしか見えない。不謹慎なのに笑ってしまう。すげー笑

スリリングな設定であるのに和やかさすら漂うドタバタ劇が妙ちくりんな面白さで、たまに藤子・F・不二雄の漫画のコマのような哀愁とコミカルさを同時に映すショットがあったり、憎たらしくも愛らしい人物造形と三人の関係性がたまらない。何かを象徴しているようでそのままのような、これ!と掴めない魅力に満ちている。
満潮で閉ざされる孤島の話で登場人物も限られているのに全く閉塞感がない。陽気でのんびりとしたテンションのせいか、危機的状況なのに全く危機感もなく、むしろ人間味あふれる暖かさすら漂ってくる。
ステレオタイプな展開には一切ならず、映画的な快楽を漲らせる画面の魅力とは裏腹に、むしろ現実はこうだよね、みたいなリアリズムが意表を突き続ける。
自然と笑みが溢れるような人と人との関わりが出会いや興味、感心によって描かれ、ときに笑ってしまうくらいコミカルな味わいがあるのに、クライマックスからラストにかけて胸が締め付けられる思いで泣きそうになる。演出的には喜劇のような素っ頓狂さであるのに見終わってしばらく立ち直れないくらい抉られた。
映画を娯楽的な面白さのあるエンタテインメントに仕上げながらも冷徹なほどの目線で描いてみせる語り口は、チャップリンの「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くからみれば喜劇だ」の名言を体現しているかのよう。考えれば考えるほど好きになっていくしまた見たくなる。傑作!!
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