袋小路の作品情報・感想・評価

「袋小路」に投稿された感想・評価

「袋小路」はロマン・ポランスキーが罪の代償という不気味な波を全身で受け止めようとしていた覚悟を感じる貴重な一遍です。

映画も長い間観続けていれば、物置の片隅で埃を被っていて突然、出番が訪れた骨董品のような作品に出くわすことがあります。
ロマン・ポランスキー「袋小路」などさしずめそんな一本。
とはいえ一度丹念に水洗いして、しっかりと日干ししたような目で観れば、ポランスキーに降りかかった不幸、彼自身が犯した許しがたい罪といったものだけに支えられた刺すような眼差しが感じ取れるかのような一遍です。
それは本作の奇特な主人公ドナルド・プレザンスのように命の危機にさほど直面しているわけでもなく、回避しようと思えばいくらでもその手段はありそうなのに、常に妻・フランソワーズ・ドルレアックの奔放ぶりに手を焼き、侵入者ライオネル・スタンダーに怯えの色を湛え、その色が限界に達すると今度は突然、怒りの色に変わる予測不能な眼差しとも言うべきもの。
ユダヤ人としての被虐も、小児性愛者としての人非人ぶりも、更には愛妻シャロン・テートの悲劇も、彼の場合はどこかポランスキー自身が招いたものという感じさえします。でなけれればこのような歪んだ映画など生まれるわけもない。
「反発」「水の中のナイフ」「マクベス」など眠りから覚めるたびに相手選ばずにねめつけるような歪んだ視線から零れ落ちた作品が無視しがたいのはその為でしょうか?

逆に大資本下の安定の元で生まれた「チャイナタウン」や「赤い航路」「フランティック」「ゴーストライター」などが本来の資質と異なるどこか雇われ監督の仕事と言う印象が残るのもそれ故でしょうか?
代表作2本「テス」と「戦場のピアニスト」についてはいつの日かに記す項目に預けます
孤島の城に2人きりで住む気弱な中年男とフランス人の奔放な若妻の元に、仕事に失敗して逃走中のギャングが押し入り、ゆるーく軟禁状態にされているうちに人間関係が崩れ、心理的駆け引きが展開されていく。典型的なスリラーのシチュエーションだが、登場人物がみなネジが外れていて、シニカルなテイストの悲喜劇になっている。フランソワーズ・ドルレアックが全裸で怪演、当時新人のジャクリーン・ビセットがサングラス姿でシニカルに登場。後半の悪ガキ大暴れの意地悪さがいい。
2018.10.14 DVD(字幕)
kaomatsu

kaomatsuの感想・評価

3.5
干潮時は本国と陸続きとなり、満潮時は孤島となる、イギリスのとある島。この、海面の潮汐という自然環境の変化を最大限に活用し、ある夫婦が世俗を離れて住む島の古城に、突然負傷したギャングが訪れることで、夫婦の(主には夫の精神的な)日常が崩壊していくことの不条理さを、スリリングかつ笑えないジョーク満載で描いた、ロマン・ポランスキー監督の長編三作目だ。こういう闖入者系の映画は、『テオレマ』や『家族の肖像』『家族ゲーム』同様、なぜか昔から好んで観ている。

孤島の古城に住む新婚のジョージ(ドナルド・プレザンス)とテレサ(フランソワーズ・ドルレアック)夫婦のもとに、突然ギャングのリチャード(ライオネル・スタンダー)が訪れる。悪事をやらかして銃弾を受け、負傷して追われる身のリチャードは、自身をかくまうことと、満潮にハマった車の移動や、重傷を負って車から出られない仲間のギャングの救出を夫婦に強要する。が、間もなく仲間は死亡。リチャードはボスを呼ぶが、ボスが訪れるはずの日に、タイミングが悪いことに、ジョージの友人家族が古城を訪問。気まずいリチャードは召使の役に転じる。プレイボーイ風の友人とテレサとの意味深な接近ぶりや、友人の息子のやりたい放題のわがままさなどにイラついたジョージは、最後にはブチ切れて、皆を強制的に追い返す。疲れ果て、しばしの沈黙のあと、再びリチャードと夫婦は対峙することとなり…。

闖入者によって破壊される日常と、闖入者だけでなく、被害者だと思われていた夫とその妻、そして夫の友人ら、すべての人物のネジの緩み具合が実にヘンテコでおかしく、かといって、その笑いは果てしなく凍りついていて、常にブラックな雰囲気が漂う。中でも、ジョージの友人家族が訪問したシーンで、手の付けられない悪ガキっぷりを発揮した友人の息子の行いを観るにつけ、小津安二郎監督の数編の傑作に登場した、憎ったらしくて可愛いげのかけらもない子供たちと同様のものを感じてしまった。そして、名優ドナルド・プレザンスのブチ切れ演技も滑稽ながら、やはりフランソワーズ・ドルレアックの妖しい魅力に尽きる。実妹のカトリーヌ・ドヌーヴよりも快活そうで、手足もスラリと長く、すべての仕草が、いや、動いていないときでさえ、究極にスタイリッシュだ。彼女の早逝が本当に惜しまれる。

これを機に、ほとんど素通りしていたポランスキー作品をじっくり観てみようかな…。
自分の中でロマン・ポランスキーという監督は「ドロッとした」映画を作る人だ。しかも並のドロドロでは無く、血管が詰まりそうなほど粘着した重さを持っている人だ。

無論それはアメリカからの逃亡やシャロン・テートの一件など、どうしても私生活の影を作品に結びつけてしまうからでもあるのだが、彼の作品中、普遍性が高いと思われる「戦場のピアニスト」や「ゴーストライター」が異色作に思えるほど、自分にとってポランスキーは「赤い航路」や「死と処女」といった倒錯した映画を作る人というイメージだ。

とは言え「ローズマリーの赤ちゃん」「チャイナタウン」以前のポランスキーは未見だったので本作には驚いた。オープニングショットはヴィム・ヴェンダースのロードムービーが始まるのかと勘違いしそうな広々とした大地が広がり、音楽もカラッとしている。爽やかさすら感じさせるものがある。

とは言え本筋に入ると一筋縄ではいかない展開となっていくのだが、それでもドナルド・プレザンス演じる夫は奇妙な変態性を見せるものの「赤い航路」のピーター・コヨーテ演じる作家のような陰鬱としたものはなく、どこか喜劇的でもある。

また「おとなのけんか」のようにごく少人数のドラマが展開されるかと思いきや、唐突に登場人物が増えるなど、比較的開かれた世界観を持った映画のようにも見える。

他にもスリラーとは思えないほどいつでも倒せそうなギャングの姿などは後年の作品にはない面白さがあった。不条理劇として「ゴドーを待ちながら」と比較する声もあるけど、犯罪者が待っている存在も目的もハッキリしていて、むしろ明快な娯楽映画として十分楽しかった。
kou

kouの感想・評価

4.0
外界から途絶された城で二人のギャングが入り込む。外から隔離された空間、そこで繰り広げられるサスペンスというのはやはり何度もポランスキーが描いた内容であるだろう。また、小心的な主人公が最終的におかしくなっていく、キレてしまうという内容も何度も描かれる部分か。

しかし、全く飽きることはない。それは流石。またモノクロの映像が素晴らしく、特にフランソワーズ・ドルレアックが美しく、自由で小悪魔的で魅せられてしまう。同じ空間だけでありながら、そこでの緊張感も倦怠感も、ラストの盛り上がりも含めてやはり面白い映画だと思う。それをコメディタッチでも描いたり、ラストの切れ味含めてポランスキーだなと改めて思う。素晴らしかった。
色々ツッコミたいようなおかしさもあるんだけど、そういう世界での話なんだと思えば楽しめる。素足にブーツ、ノーブラにニット、良い!
ゴマ

ゴマの感想・評価

3.8
ドナルド・プレザンス扮する旦那が終始情けねえ~~~
右腕折れてるなら二人がかりで何とかなりそうなもんだけど・・・テナントもそうだけどポランスキー作品の登場人物は変人が多い。
古城に住む男性と若妻。そこにギャングの男が入り込む。『おとなのけんか』のように、コミュニティに他者が入ることで予想もしないことが起こる、!という展開。モノクロームで、味のある映像。客観的に捉えたストーリーが楽しめた。
yumiko

yumikoの感想・評価

4.7
鶏のいる生活(しかも無数): あらゆるところで関節脱臼の音が響きながら偶然でくわす人々ががらりがらりと朽ち崩れてゆく灰色の古城と砂浜の英国: 生卵映画。
華

華の感想・評価

3.5
とんだ災難だなぁ…
あの状況で、ああなって、あんなセリフが出て、オチがあんなことになるとは。ゆるくて変な笑いがこみあげてくる。
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