明日3月25日は往年の大女優・京マチ子さんの94歳のお誕生日です!
おめでとうございます!
名立たる巨匠たちと共に名画を支え、今も生ける伝説として昭和の銀幕を彩るその美貌よ。
彼女の輝かしいフィルモグラフィの中でも特に異質なのが、モダニズムの黎明期にあった市川崑監督の逸品『穴』
そのグラマラスな体躯をフルに駆使し、とぼけた表情で華麗な七変化を繰り広げるマチ子さんを崑監督が洒落たタッチでカメラに収めていきます。
崑監督と、妻で脚本家の和田夏十がアガサ・クリスティをもじった共同ペンネーム「久里子亭」の名でシナリオを書き下ろし、
ウィリアム・ピアスン『すばらしき罠』の翻案に挑んだサスペンス喜劇。
横領を目論む銀行員たち、起死回生の失踪ネタ企画を利用されて罪を着せられるルポライターの北長子、犯人を追い立てる警察の三つ巴の攻防はとにかく軽妙!
複雑に入り組んだ各々の思案が交錯し、あと少しでバランスを崩せばスラップスティックに傾く一歩手前、
狂騒的に駆け巡るストーリー展開と京マチ子の早口でスピード感は更に加速してゆきます。
ミステリーとコメディを融合させた崑監督の類い稀なる才覚は後に金田一シリーズへと引き継がれ、
髭面の猪突猛進な猿丸警部のなんかは加藤武のキャラクターにも通じていたり。
芥川龍之介の息子・芥川也寸志の小粋なジャズスコアに乗せ、崑監督の実験的な試行錯誤が詰まった意欲作です。