ナガノヤスユ記

愛・アマチュアのナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

愛・アマチュア(1994年製作の映画)
4.6
多分数年ぶり2回目。
今になって分かる、なんだこれ、めっちゃ好き。

身体的欠落と精神的欠落の補完的合一(不)可能性というド直球のロマンス。そして、記憶喪失の男の過去がマクガフィン的なものとして人から人へ受け渡されていった結果生じる、情報価値の喪失、緩やかな瓦解、贖罪と受容。
この縦糸と横糸が豊かな脱線を織り込みながら、ユペール演じるイザベルの変容を紡いでいく。彼女の転身さながら、映画もくるくると表情を変えてみせる。

端的にいって最高。とりわけ、決して完全無欠とは言い難い独特の脚本に関しては、ハル・ハートリーのひとつの到達点でしょう。しばしばナンセンスな演出ともあいまって、まさに台詞の一つも聞き逃してはいけない。簡潔でいて奥行のある英語ラインの最高峰じゃなかろうか。日本人の僕からすれば、この映画みたいな台詞回しは日本語にはおいそれと真似できない芸当だなあと思うわけで。ユペール様のラストライン"I know this man."までとくとご堪能いただきたい。

そう、まさに、"I know this man"ということの一層困難な現代よ。