ナガノヤスユ記

落下の解剖学のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.7
冒頭の学生によるインタビューまでは結構期待感高く見ていたのだけど、その後落下〜発見にいたるまでの一連でなんとなく嫌な感じがして、結果その印象が覆ることはなかった。手持ちとフィクスを行ったり来たりするカメラよろしく映画の視点がブレている気がして、「見せる・見せない」がとても恣意的な感じがした。それはそれで良いパターンがないこともない (基本的には好かない) けど、少なくとも映画の8割が法廷劇の形をとって、しかも結局事実 (≠真実) を曖昧なままに終わらせるこの映画にとってそれは致命的では? なんだか都合よく隠されているだけなんだよな、というモヤモヤを抱えたまま、それでも、外から見えないあるカップルの軋轢を詳らかに見せる回想シーンには迫力もあったけれど、あれさえも付け焼き刃的な感じは否めず。
『関心領域』の妻役の女優はこの映画でもかなり素晴らしいダークヒーローを演じていて、子役もとても良かったけど、とことん演出にハマれなかった。なので、最終的に脚本が評価されたのはある意味皮肉な結果ともとれる。