月うさぎ

任侠ヘルパーの月うさぎのレビュー・感想・評価

任侠ヘルパー(2012年製作の映画)
3.7
「任侠道。弱きを助け、強きを挫く。命を捨ててでも義理人情を貫く。俺はそんな、本物の極道になりたかった」
憑依型俳優、草彅剛を誰もが絶賛。
本物のおっかない人です。終始目つきが違う。
凄まないのに悪意や冷たさが目に表せる
普段の彼(天然無邪気)がよく知られているのに、それが全く邪魔にならない。別人。凄い事よこれは。

翼彦一の新たな「仕事」は、老人相手に闇金で破産させ、認知症の老人は老人介護施設「うみねこの家」に入れ、生活保護や年金をせしめることだった。悪臭漂う劣悪な環境の中に収容されている老人たち。牢獄以下の生地獄を見るうち、次第にこの状況に苛立ちが募るように…

彦一の心の声は最初と最後だけ。敢えて語らせない。過去を匂わせたりもしない。でも「お腹すいた」と泣きべそをかく子供に過去の自分をみただろうことは伝わる。しっかりとした作りだと思う。

草彅剛は舞台俳優としても高く評価されている。声もいい。言葉も届く。身のこなしもキレがある。
しかし目の演技がこんなにも上手いなら、やはり映画で見るべき役者なのかもしれない。
暴力団映画なので暴力シーンが結構いっぱいあるのだが、アクションもよく撮れていてカッコいい。ついでにメイクも上手い。ごまかし感がなく、本当にボコボコになってるみたいに見える。

介護問題。老人と貧困問題。政治が弱者を救えていない現実。一度渡世人の世界に足を踏み入れた者には校正の道も閉ざされているという、社会の「差別構造」の問題もある。行政への暴力団の介入がどのように行われるかまで、多くの問題点を炙り出す事に成功している。
一方、問題解決はできないままで彼は去って行かざるを得ないのも現実。
という点はフィクションドラマとしてのカタルシスとしては弱い。

しかし言いたいことは言っていると評価してもいいだろう。

人が人として認められる事。それには人との関係性が何よりも欠かせない。設備やサービス以上に大切なもの。それは自分の居場所だと心から思えることなのだと。

彦一の居場所はどこだろう?
それはこの映画では示されない。
だからこの映画は日本のノワール映画。

ファムファタール・ポジションのりこ役を黒木メイサではなくサンドラ・ブロックがやれば映画が締まったのだ。残念。と「ブレット・トレイン」を思いつつ。

(反省点)
任侠映画はヤクザ映画の別名ではなかった!

任侠とは、弱きを助け強きをくじき、正義のためには命も惜しまない気概をいう。任侠を通す生き方を任侠道、そういう人たちがたくさん出てくる映画を任侠映画という

そうだったのか…
月うさぎ

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