玉生洋一

息子の玉生洋一のネタバレレビュー・内容・結末

息子(1991年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

以前は、この手の作品は
地味で退屈だろうと決めてかかり
「前のめりで見よう」という姿勢にはまったくならなかったのだが
このところこの手の作品が面白くてしょうがない。

●息子の帰省
●息子の恋
●父の上京
という3部構成になっており
物語がまったく停滞しないので
ずっと前のめりで没頭できる。

印象的なのは
恋した女性がろうあ者だと知った息子が
「それがなんだっていうんだ」と怒るシーン。
耳が聴こえないことを憐れむ人に対する憤りと
それを知ってそれなりに驚いた自分の感情(真剣に彼女のことを考えているからこその驚き)が
混ざりあった憤りなのだろうと思う。

息子が結婚することを知り
ウキウキして眠れない父親のシーンも印象的。
息子の幸せを我がことのように喜び
息子が結婚することによって生じるあれこれ
(新たな孫ができたら夏休みには遊びに来るのだろうといったこと)
を想像して喜ぶ幸せ。
見ているこちらも幸せな気持ちになると同時に、僕自身は両親にそのような幸せを贈れていないので申し訳ない気持ちにもなる。

息子の恋が成就するまでの過程や、
結婚までに諸問題を乗り越えていくシーンも見たかったが
それらを描くと前後編になったり
連ドラになったりしてしまうのだろう。

父が亡くなる結末になるのかとも思ってヒヤヒヤしたが
そうはならなくてよかった。

いかりや長介好演。
お富さん名曲。

平成初頭の光景がもはや
超ノスタルジックなものになっていて驚く。
よく知っている新宿の街並みが、遠い昔の街のよう。
30年も前ならそりゃそうか。
僕が小学生の頃の30年前といえば戦後すぐなわけだし。

仕事に恋に汗を流す息子の姿は
若いエネルギッシュに溢れていて
忘れていた活力がみなぎってくる。
年齢に関係なく「無限の可能性が明日に待っているような生き方をしよう」と思った。

※2021.9 BSテレ東。