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女性No.1のSPNminacoのレビュー・感想・評価

女性No.1(1942年製作の映画)
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この手のロマコメは、男女が反発しながらやがて愛に気付くパターンが多いけど、直接出会ってすぐにもう恋に落ちちゃう。スポーツ記者サムはジェントルな態度だし、国際政治記者テスは女神かクイーンかのように崇拝される。
何せとにかくキャサリン・ヘップバーンが美しく愛らしくて、テスが登場する場面がいちいち魅惑的に洒落てるんだもの。ストッキングを直す脚から始まり、男たちの巣=パブではバーテンの陰から鏡の中に現れ、酔ってテーブルの下から顔を出し、その都度その意外性でハートを鷲掴み。また2人のキスシーンは背中を向けたりシルエットになったりで、巧いこと隠されると尚更甘美でセクシーだ。そして男女はお互いを否定せず、見つめ合って違いを受け入れる。ダダダダと速報を打つ電信音が、恋の鼓動を響かせて心憎い。
けど問題は、スピード結婚した後だった。マイペースでバリバリ仕事する妻にプライベートな時間もなく、物分かり良いはずの夫は疎外感を募らせる。意外性や驚きで魅了したテスの行動が、後半は強引で無神経すぎて困らせるばかり。否が応でもサムへ同情せざるを得ない(巻き込まれたギリシャ難民少年にも!)くらい、極端な人として描かれるテスは分が悪い。まるで「行き過ぎた女性の解放」を牽制するかのような保守的展開になってしまう。
“今年の女性NO.1”に表彰されるテスのスピーチは虚しく聞こえ、フェミニストの先輩だった叔母は収まるところへーーつまり結婚して家庭を選ぶ。失ってわかる相手の尊さ…って、甲斐甲斐しく必死に自分を変えようとするテスが痛々しかった(義母にあんなレシピもらったらドン引くよ…)。でもさ、最初に自分と異なる世界を「楽しんだ」のはテスで、適応できなかったのはサムなんだよね。
キャサリン&トレイシーはさすがの演技と相性で、お互いの魅力を引き立て合う。脚本は皮肉と愛嬌のバランスが巧いのだが、2人の落とし所を「引き分け」にしてあるのが精一杯。『ロング・ショット』はこれを下敷きにアップデイトした版か。
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