みかんぼうや

兵隊やくざのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

兵隊やくざ(1965年製作の映画)
3.9
てっきり戦争映画だと思っていたら戦時中の日本軍隊の中のゴタゴタ話。正直、話の内容が突出しているわけではないのにこれほど面白いのは、若き日の勝慎太郎演じるヤクザ上がりの二等兵大宮と田村高廣演じる有田上等兵の、ともに人情溢れるが対照的なキャラクターがなんとも魅力的で、かつ上司-部下である二人の漢としての絆が最高だから。終盤はその関係性が深すぎて、もはや戦場BLのようにすら思いましたが(2人とも爽やかさのかけらもないんですけどね)、エンタメとして十分面白かったです。

ヤクザで上官の命令をきかない荒くれものの大宮が軍に入隊し、そんな問題を起こし続ける大宮の面倒を諦めずに見続ける有田上等兵。そんな有田を大宮が慕っていく、という構図は、途中の軍内のケンカシーンも含めて、ベタではあります。軍が舞台ですが、内容はいわゆる兄弟の契りを交わした、まさにヤクザ映画ですね。

本作はこの第一作が人気爆発で、シリーズ全9作品が公開されたそうです。たしかに、本作のラストを観たら、続編を観たくなります。

勝慎太郎演じる大宮が魅力的なのは言うまでもないですが、個人的には上司となる有田上等兵のほうが本作においては魅力的でした。部下を可愛がり、上司の指示に従順ながらも己の正義を貫き通す一方、ふとした瞬間に「軍を逃げて自由になりたい」という弱みをこぼす人間味。思わず肩入れしたくなる素晴らしいキャラ設定でした。

増村監督作品は「清作の妻」、「妻は告白する」に続いて3作品目。先に観た2作と変わり、思いっきり男臭い作品でしたが、これも好きだな。しかし、続編がたくさんあるはずなのに、続編はほぼ配信されていないのが残念!
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