こなつ

灼熱の魂のこなつのレビュー・感想・評価

灼熱の魂(2010年製作の映画)
4.0
レバノン生まれでカナダに移り住んだワシディ・ムアワッドによる戯曲の映画化。
監督は「メッセージ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ。2011年公開

「モロッコ、彼女たちの朝」(2019年)「青いカフタンの仕立て屋」(2022年)での圧巻の演技に魅了されたルブナ・アザバルが出演している作品だったし、フォロワーさんのレビューを読んでいつか観たいと思ってクリップをしていた。

1975年~1990年に発生したレバノン内戦を背景に描かれたサスペンス。中東系カナダ人の女性が亡くなり、公証人から双子の姉弟に遺言が伝えられた。それは、父親と兄を見つけ出し、それぞれに宛てた母からの手紙を渡すという内容だった。その遺言に当惑しながらも、父と兄を探し出し、辿り着いた真実はあまりにも残酷で驚愕するものだった。

戦争というのは、本当に容赦ないものだと映像を通して痛感する。普通の人々やたとえ子供でさえも残忍な手口で虐殺していく。そしてまた銃を持つ人々にも悲惨な過去があったりすると居た堪れない気持ちになる。自分の祖国や民族のため、信念のため、戦う姿は今まさに毎日ニュースで流れているのと何ら変わりない。時が経っても何処かの国で繰り返されている悲劇の中、目を背けたくなるシーンを複雑な思いで鑑賞した。

遺されたのが双子の姉弟で良かった。ひとりだったら、この現実にまともに向き合えなかっただろう。凄まじい人生を送ってきて、絶望の中、祖国を離れた母ナワルを演じたルブナ・アザバルはやはり素晴らしい。言葉もわからない母の祖国で必死に母の痕跡を追う姉ジャンヌ(メリッサ・デゾルモー)の姿にも胸が震えた。

鑑賞後はぼう然となるほど衝撃的な作品だったが、最後まで息つく暇もなく引き込まれた。体調の良い時に観た方が良いというフォロワーさん達の助言は正しかった。
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