カッコイイ絵ヅラありきで、物語はおざなりでわかりやすさなんて微塵も考えてなく場面はブツ切れ、展開も結末も思わず何でやねん!と突っ込まずにはおれないお粗末さ。いや、媚びない潔さ。
なのに、オモロい。目が離せない。
松田優作が自ら認めたというチャンドラーの「長いお別れ」の丸パクリ、例えばあれが原作ですと言ってしまえばもう少しストーリーもわかりやすいのに、とか言ってみるw
しかしそれ以上に目立つのがショーケンのTVドラマ「傷だらけの天使」へのオマージュだ。かの最終話を演出したのが同じ工藤栄一監督で、オープニングの食事シーンからラストのXXXまで、こんな画を撮りたかったんだよぉ!という松田優作の思いが迸っている。
ボクは「探偵物語」より「傷天」派なので、もし他の誰かがこんなことをしてたら興醒めもいいところだけれど、本作に限っては愛情の深さと工藤監督に免じて許す!(何様w)
それと、脚本の丸山昇一とカメラの仙元誠三は共にTVの「探偵物語」を手がけており、やはりこれは優作の描く「傷天」なのだなと。
少し異なるのは、今作はゲイ描写がそこかしこに見られるところ。それどけに内田裕也との結末はちょっと無理がありすぎに思えたんだけれど「カッコいい画」から始まってるなら仕方ないか、と諦めることが出来たw
優作の強い思い入れのこもった作品であるのは、自らがバンドマンとしてステージに立ち、堂々と歌を披露していることからも伝わる。これがまたバックの演奏はクリエイション、アレンジはパラシュートの今剛と驚くばかりのハイクオリティ。
エンディングの「マリーズララバイ」泣きのギターはずっと聴いていたい。
なんなら松田優作のプロモーションビデオを兼ねた音楽映画として観るだけでも相当な値打ちもん。逆に優作が好かんという人には何も響くところはない。
ま、そんな映画もあっていい。