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ビューティフル・マインドのAutomneのレビュー・感想・評価

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
4.4
ノーベル賞をはじめとして数学界に偉大な功績を残したジョン・ナッシュの人生を描いた映画。
いわゆる天才映画の効用というのは、孤独が救われること。
誰も見ていないし知るよしもない日陰の努力がそこには描かれていて、大学の広いキャンパス、本、計算式、音楽、それだけ、それだけで満ち足りている。どこかから小鳥がさえずり、窓から日が差して、夕焼けとなり、夜となり、そして朝日が昇る。
慎ましやかな不断の努力。その片鱗を見せられると、ああ、ここまで生きてきた私の人生のただのひとつも無駄ではなかった、そしてまだまだやれることはたくさんある、と思える。そんな強さ。
統合失調症の幻覚や妄想がリアルに描かれていて、そのあたりはパプリカやシャッターアイランドが好きならおすすめする。
幻覚と現実が錯綜して、実は偉大な研究も、愛するひとも、すべてが妄想なのではないか?そう思うほどに激動たる人生で、けれどその答えはアリシアの言った《頭でなくて、心に存在するもの》なのかもしれない。アリシアは素敵な方ですね、離婚と再婚を繰り返して生涯ジョンに寄り添ったのはなにか運命めいたものがあったのでしょう。
この映画の作られたあと、2015年に夫妻はふたりともに交通事故で亡くなってしまいます。最期まで激動な人生で、病あれど波乱あれど絶望あれど、それでもふたりは幸せだったんだと思います。それは決して悲劇ではなくて、はじめからそうと決まっていたもののような気がします。美しい死。
ご冥福をお祈りいたします。
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