センチメンタリス

ビューティフル・マインドのセンチメンタリスのレビュー・感想・評価

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)
5.0
登場人物は、ノーベル賞を受賞した経済学者であるが学問という分野にさえ、その創造性がときに芸術と呼べるものとして生まれることは少なくない。

ラカンの有名な言葉に、「芸術とは、無に形式を与えることである」というものがある。

天才が創る芸術は、直観的に無を感じ取りそこに形式を与えていく、そういう営みのことをいうのだろう。

しかし、常人では触れえない無の領域を垣間見た人間が正気を失うのか、もしくは狂気(精神病)的な特質がそうした無の領域を感知させるのか、そういう話は遥か二千年程前の西洋哲学から連綿と続いている。芸術というものが”創造と狂気”から”創造と精神病”への関係としてその変遷が扱われてきたものでもある。

本作は、ラッセル・クロウ演じるジョン・ナッシュと彼を支える人々との人間模様も見所のひとつであるが、常人には出逢えない世界の裂け目を垣間見た人間には自分の周りのモノが以前の世界のように眼に映ることはなく、彼の以前の眼としてモノを映すのは周りの人間の眼を通してしか為されないのではないかという、崇高さと同時に切なさのようなものを感じる作品だった。