センチメンタリス

時の面影のセンチメンタリスのレビュー・感想・評価

時の面影(2021年製作の映画)
5.0
作品の良さは改めて記すまでもないので、割愛しますが、見終わった後に残る温かい気持ちは多くの人が感じたところではないでしょうか。

「対象の発見とは実際は、再発見である。」

Die Objektfindung ist eigentlich eine Wiederfindung
ーーフロイト『性理論』第3篇「Die Objektfindung」1905年

誰もが自らの中に、「対象」が眠っていて、それを発見することはフロイトの言うような再発見なのだろう。
考古学は、当時の生活を物語る品々や
生活の様子を紐解く学問といえるわけだが、私たちの日常も似たようなものなのかもしれない。
その場所に集まり、力を合わせて何かを成し遂げるまでの道のりは、それ自体皆で、成し遂げられるまでは深く埋もれている何ものかを掘り起こし、「対象」を再発見する試みといえるかもしれない。

奇しくもそれは、自らをも細やかに掘り起こしていく作業に他ならない。
そして、それに気づいた人々は、人生というものが、なんと短いものであるかを自らの深層から聞き知るのである。

自らの心の考古学を行うものにとって、知ってか知らずか、自らの中に眠る「船」を再発見することになるのかもしれない。