アニマル泉

あの彼らの出会いのアニマル泉のレビュー・感想・評価

あの彼らの出会い(2006年製作の映画)
4.5
ストローブ=ユイレが共同制作した最後の長編映画。イタリアの共産主義作家チェーザレ・パヴェーゼの神話を踏まえた対話詩集「レウコとの対話」の最後の5篇を映画化した。
第1話「人類」は地上に降りたゼウスをめぐる女神と神の対話。風が吹く見晴らしがいい丘で延々とバックショットで描く。
第2話「秘儀」はピカソの「アビニョンの娘たち」の構図のような、木にもたれかかる若い男女の神、ゼウスの末息子ディオニューソスと豊穣の女神デーメーテールの葡萄酒とパン、血と肉、死と再生をめぐる対話。木漏れ陽と影が圧倒的に美しい。
第3話「洪水」は木の精霊と半人半獣の精霊、2人の女精霊による来たる大洪水と人類滅亡についての対話。大雨といいながら晴天、水音がするが葉で覆われて水は見えない。全てがズレている。
第4話「ムーサたち」は記憶の女神と「神統記」を書いた叙事詩人の山腹での対話。神と人間の対話だ。希望と倦怠、一瞬と永遠が語られる。
第5話「神々」は銃を持った二人の猟師が山上の岩場で対話する。二人の人間が神の不在を語る。
どの場面も風が吹き、光と影が揺れ、水音が流れる、艶やかな自然に包まれる中で、役者が不動でカメラ目線で朗読する。オリヴェイラの「繻子の靴」が想起される。唯一無比のストローブ=ユイレ印である。
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