プリオ

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのプリオのレビュー・感想・評価

5.0
観る人を選ぶ作品だ。合う合わないは明らかにある。

ただ歴史的な作品だということには、間違いない。えげつない世界観を持っていて、メッセージ性も、キャラの完成度もハンパない。

エヴァを語るには、いろんな切り口があると思う。世界観を形作る宗教、哲学、心理学など。シンジ、レイ、アスカ、ゲンドウ、ミサトなどの魅力的なキャラ。庵野秀明監督を掘り下げる見方。作品のテーマやメッセージの探求。

どこに着目するのかで、だいぶ感想が変わってくる作品だ。








ーーーーーネタバレーーーーー








ここでは、テーマについて少し。

エヴァのテーマは、「人と人の距離」だ。これは一貫していると思う。

「ヤマアラシのジレンマ」の話はリツコのセリフにも出てくる。近づきたくても、傷つけあってしまう。そんなジレンマを抱いた者たちの物語だ。
 
ヤマアラシの棘は、ATフィールドとも捉えることができる。

ATフィールドのある世界orない世界か。

シンジがどちらを選ぶのか。

自分と他人の境界が存在し、お互いが傷付けたり傷付けられたりする世界。
自分と他人の境界がなく、傷付けたり傷付けられたりしない世界。

シンジは最終的に境界のある世界を選ぶ。他者がいる世界。痛みを感じる世界。

このシンジの選択は、テレビシリーズも、今作も、新シリーズも、微妙に違えど一貫している。

今作では、シンジはアスカの首を絞める。そしてアスカに「気持ち悪い」と言われる。

新シリーズのラストでは、シンジとマリは手を取り合う。

どちらにせよ、シンジが他者のいる世界を選んだことを意味している。印象はだいぶ変わることは、間違いないが。


余談だが、「全ての悩みは対人関係」と心理学者のアドラー言っている。

映画とは、主人公が何かしらの悩みを乗り越える物語。つまりエヴァは難解な内容に思われがちだが、メッセージ自体はド直球でわかりやすいものなのだ。


<追記>
かなり胸糞悪いラストにもとれるが、他者がいる世界を選んだというテーマ性は、シンシリーズと同じである。

旧シリーズでのシンジがアスカの首を絞めることも、新シリーズでのシンジがマリと手を取り合うことも、印象はかなり違えどどちらも他者との関係性の現れである。

嫌悪も、愛好も、他者がいるからこそなのだ。
プリオ

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