けーはち

夜のけーはちのネタバレレビュー・内容・結末

(1961年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ミケランジェロ・アントニオーニ監督の“愛の不毛3部作”の2作目。何だか凄いくくり方だなぁ。アッパーミドル夫婦の倦怠期の様子を描く。

主人公は著名な作家と、その妻。映画は2人の昔からの友人が死病の床にあるシーンで始まるが、彼は文芸評論家で2人の事を高く評価していた(妻も文筆家だったんだろう)。今や2人の関係は完全に冷えていて、夫がサイン会などで出ずっぱりの間、妻は昔住んでいた下町をぼんやりと歩くなど心ここにあらず。

ある夜、2人は富豪のパーティーに呼ばれる。ダンディで自信に満ちた作家は今はスランプで刺激を求めアチコチの女に何となくフラ~ッとする。ラストシーンで、妻は「夫よりあの評論家の彼の方が良かったかもしれない」とか今さら言い出す。評論家の彼はよく話を聴いてくれたが、作家の夫は「俺が俺が」タイプで、そっちに引っ張られてしまったのだと。そして妻が夫の最初のラブレターを後生大事に持っていて、それを引っ張り出して読み上げる。夫は自分が書いた文面を完全に忘れていたのだが、それを読み上げられて何だか妙に昔のホットな気持ちが蘇ってきたのか、急に情熱的に妻を求め出して野外で情事を始め、やる気ない感じで何となくそれに応じる妻、という図が相変わらず2人はこのままやっていくんだろうなぁ~という夫婦の未来を想像させて滑稽なのだが、文学的で繊細なドラマ運びには唸らされる。

イタリアはカトリックの強い国で、'70年まで離婚が禁止されていて、今では法的には認められるが、簡単な手続ではなく数年の別居期間を置いて裁判をするなど大がかりらしい。倦怠期のまま夫婦がズルズルやっていくというのは、どこの国でもありえる話だが、特にイタリアではごく普通のことなのだろうねぇ。