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大いなる幻影のcyphのレビュー・感想・評価

大いなる幻影(1937年製作の映画)
3.8
ルノワールマラソンの続き、ジャン・ギャバンマラソンのはじまり ドイツ軍に捕まったフランス人捕虜たちの収容所暮らしと脱獄計画が主なストーリーだけど、戦争モノとしてあり得ないくらい敵意らしい敵意のない世界線で二次創作でも見てるような気分になった キャビア缶の差し入れだ!と両国の軍人がわいわい木箱の周りに集まるかんじとか、差し入れされた女物のドレスを纏ってルノワールお得意の身内のショーで盛り上がったり、捕虜のみんなに一人一個ずつラッパが配られたり、一見すると青春男子寮モノと見紛う 一方で命を賭けた脱獄は水面下で進み、脱獄囚はしっかり射殺される 仮初のユートピアに見えるゆるゆる収容所にも戦争の冷徹なルールが敷かれている

軍人であることをアイデンティティにしているキャラクターがほぼ出てこず元々の職業や身分(貴族階級)で自己紹介をしていくあたりも戦争というシステムの空々しさを浮かび上がらせてよかった 特にシュトロハイム演じるドイツ軍人のいかつい顔に反した人道的な心配りの数々 彼が悪人として描かれないことが作品を決定的に無二のものにしてる

脱獄後のシングルマザー未亡人との穏やかな日々はそのテーマのダメ押しというかんじで意外とだらだら続くなという印象だったけど大人3人で用意したクリスマスの飾り付けや生のじゃがいも?をシャリリと頬張りながら未亡人を落としに(慰めに)向かうジャン・ギャバンの粋さなどよいディテールも多かった
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