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クイーン・オブ・ダイヤモンドのcyphのレビュー・感想・評価

3.6
真っ赤なマニキュアがてらてら光る長い爪、カジノディーラーと訪問介護の仕事をはしごする彼女の日常、老人の背中をタオルで拭う手つきの慎重さ、フィアンセを殴って怒鳴る男と殴られる女との美しいガーデン・ウェディングの空々しさ、遠く燃える椰子の木、美しい湖のほとりの団地みたいな建物の手前に育った人みたいなカタチの椰子の木、大きく平たく丸いギザギザの何か(南国植物の一部みたく見える)がトラックで運ばれてく様子、殺人現場のすぐ横に佇む3頭の象、気怠げに魚をフォークでぐしゃぐしゃにして中から出てきた指輪をフォークで拾ってコロンとテーブルに転がして去る、指も立てず視線もくれずただ道路脇に立ちいつか止まる車を待つ

ポストカードみたいに美しい絵は何度かあったけどそれがショットの美しさに繋がっているかというと 最近ベッケル観てたこともあってショットのリズムのなさ、弱さにかなりくたびれてしまった ジャンヌ・ディエルマンのアメリカ版と言ったらそれまでだけどジャンヌ・ディエルマンほどのリズムの快(または不快)もなく 一生続くようなカジノシーンもおそらく全く狙った上で魅力ゼロに映るよう撮られていて、その後ろ側にいろんな理論武装があるんだろうけど体験としてはただつまらない映像をあてどなく見せられるだけなので苦痛だった 鮮やかな手捌きも、客たちの欲望も絶望も、緊張も弛緩も何もなくつまらなく見えるよう心を砕いたショットが時系列シャッフルで延々繋がれていく時間

真っ赤なマニキュアの爪が画面に映るとオッてなるのと、老人の介護をする時間の宙ぶらりんな居心地の悪さがルシアベルリンぽくてそれはよかった お外のショットも基本よかったけど、夢中にさせるほどのドライバーは見つけられなかった
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