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日本侠客伝 花と龍のtakのレビュー・感想・評価

日本侠客伝 花と龍(1969年製作の映画)
3.0
かつて石炭積出港として栄え、映画ロケで数々の実績がある北九州市若松で開講された、ロケ地観光を考える市民講座に参加したことがある。新旧の作品を観てロケ地マップを作る、なかなか楽しい経験だった。

若松出身の作家火野葦平の「花と龍」は彼の代表作。これは葦平の父玉井金五郎と母マンの半生、石炭荷役ごんぞうのエネルギッシュな生き様を描いた義理と人情にあふれた人間ドラマ。これまで何度も映画やドラマ化されてきた。しかし、いわゆる任侠映画のひとつとして世間ではイメージされており、原作のよさが誤解されている状況がある。

事実、玉井金五郎は男気のある人物で多くの人々に慕われた。その孫が、アフガニスタンで非政府組織で活動中凶弾に倒れた中村哲氏。弱き者のために力を尽くすそのスピリットは、祖父から受け継がれたものなのだ。「もう一度「花と龍」が若松ロケで撮られたなら、やくざものとして知られている誤解を解きたい」という地元の声もある。

小倉昭和館でタイムリーに高倉健特集があり、「花と龍」が上映されると聞いて行ってきた。この「日本侠客伝」はシリーズとして製作された、日本各地を舞台にした任侠もの。本作が第8作、続く9作目の「日本侠客伝 昇り龍」が火野葦平原作となっている。石原裕次郎主演の「花と竜」を劇場で観る機会に恵まれたが、その時に感じたのは、任侠映画のかっこよさというよりも筋を通す男の生き様のかっこよさ。決してバイオレンスを楽しむ映画ではないことに驚いた。

裕次郎版と比べると、高倉健版はやはり荒っぽい。そこはやっぱり「日本侠客伝」と銘打っているだけに、任侠映画のかっこよさをクールに追求した出来映えとなっている、と感じた。高倉健の金五郎は最初はやや頼りないし、どちらかと言うと不器用ながらも人に懸命に立ち向かっていく真摯さが魅力だ。地味だけど懸命に頑張る姿を周りが評価して慕われる男。それを助ける女性たち。裕次郎の金五郎のグイグイ引っ張っていくような男気とは違って、寡黙に自分を貫く男。それは健さんのキャラ故の役作りだろう。しかし最初にも述べたように、世間での誤解につながるようなバイオレンス色を印象づけたのは間違いないだろう。

「若大将」シリーズのヒロイン星由里子が気っぷのいい石炭荷役を演ずるのに最初は「え?」と思ったが、だんだんと自然に見えてくる。女彫り物師を演ずる藤純子がやはり美しい。クライマックス、黒田節を歌いながら銃を構えて主人公を救う場面は健さんがかすむ。