産業の炭鉱で労働者のストライキが起こっているイングランド北部のエヴァリントン。幼い頃に母を亡くして炭鉱夫の父と兄、認知症を患う祖母と暮らす少年で、父の意向でボクシング教室に通うビリー・エリオット。ある日教室の隅で開かれていたバレエ教室に参加した所、徐々にその魅力に憑りつかれていく彼の青春を描くドラマ映画です。
演出家としてブロードウェイを始め百本以上の舞台を担ったスティーブン・ダルドリーの映画監督デビュー作となる2000年公開の作品で、七度のオーディションを経て数千人から選ばれたジェイミー・ベルを盛り立てて演出した物語が観客の心を捉えて世界で一億ドルの興収を記録。オスカー常連ノミニーとなる彼のキャリアの礎となりました。
家族関係の修復に師弟関係、認知症に同性愛と様々な要素を盛り込みながら散らかすことなくまとめていて、端役を含めた全登場人物を愛でる展開が物語のテーマである「男がバレエ・ダンサーを夢見たっていいじゃないか」と呼応します。その下地の上で見事な存在感を発揮するベルのダンスを応援したくなる、老若男女に愛される一作です。