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アイアンマンのninekoのレビュー・感想・評価

アイアンマン(2008年製作の映画)
3.6
THIS IS AMERICA!! 改めて、色々な意味ですごい映画ですね。

軍産企業の社長トニー・スタークがアフガニスタンでテロリストに拉致られるも脱出、その後「武器作りはやめる。その代わり俺が武装してテロと戦う(キリッ」と宣言してアイアンマンに変身するという成り行きは、筋が通っているようでいて恐ろしく欺瞞的で、要するにイラク戦争以降の(もっと言えば戦後の)アメリカのあり方そのものだ。それを1.4億ドルという巨額の予算(CGのクオリティは12年前とは思えないほど高い)を投じてポップ・カルチャーとして作り上げ、あろうことかそれを全世界に輸出してしまう、その大胆さというか、面の皮の厚さには驚かされる。当然、それを作り手が自覚していないはずもなく、だからこそ、物語は最終的に父親の共同経営者とのバトルというお家騒動へと極端に矮小化されてしまう。めちゃくちゃだ。

本作に、何度もドラッグ依存でキャリアを中断されてきたロバート・ダウニー・Jrの華麗な復活作という側面がなければ、ここまで支持を集めただろうか...なんてことを言うと熱心なファンからは「何を適当なことを」と叱責されてしまうに違いない。文化史・地域史的な重要性では同年の『ダークナイト』を凌駕する大娯楽作。
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