EugeneHashimoto

崖の上のポニョのEugeneHashimotoのネタバレレビュー・内容・結末

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

公開当初(2008)にはどんな気分で観られたんだろうか。水中で干されたまま揺らめく洗濯物の画とか、今はかなり深刻に見える。

ポニョが人間の血を舐めることで人間の姿を得た肉食の魚であるところからしてわりと衝撃的だった。怪奇っぽい趣が随所にある。「船の墓場」を陸地と誤認するくだりとか、トンネルの中を歩いている間に手を繋いでいる相手がだんだん魚化していくくだりとか。ここの劇伴不穏じゃなくていいの!?と戸惑うことがままあった。音楽が麻酔薬みたいに機能していて、被災地を水族館のように見ることを促している。

二人の五歳児の幸福な関係がとんでもない厄災をもたらしているという状況を大人はどういう気持ちで観たらいいんだと困惑した。

魚の女児が人間になるのに際して男児の純情が必須という古風な理屈が不満で、個人的にはもっとフィジカルに骨一本吸い取るとかのほうがよかったのではないかと思った(そもそも魚と人の間を行来しているポニョがことさら「女」児として描かれないといけない道理もないような気がする)。


批評を読んでいると水没後の世界を冥界と見る解釈があって、それはそれで納得できるけれども、個人的には、パンダコパンダ2でそうだったように、水没世界はまず第一に「すてき」なのものとして表現されていると理解したいと思った。だからこそ(実際の水害や津波のもたらす濁った黒々とした水ではなく)空気ほどに澄んだ水に浸されているのだし。深読みするにせよアニメーションであるということは既にひとつのオチなのだし。
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