Mikiyoshi1986

浮草のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

浮草(1959年製作の映画)
4.5
本日3月25日は日本映画史にその名を刻む名女優・京マチ子さんの93歳のお誕生日です。
おめでとうございます!

大映に京マチありきと謳われた筆頭看板女優として、「羅生門」や「雨月物語」や「地獄門」など国際的な名声をも獲たマチ子さん。
そんな彼女の小津映画初出演がこの「浮草」であり、なにかと引っ掻き回す嫉妬深い女を情感たっぷりに演じてくれています。

この時のマチ子さんは35歳ですが、やはり30代に入ってから醸し出されるこの色気は
20代のそれとはまったく比にならんほど、ほんま乙なもんでおまっしゃなぁ。
本作と「赤線地帯」のマチ子さんは特にそそります。嗚呼、抱きてえ…。

妹分役で出てる我らの青空娘・若尾文子も当時26歳ですが、二人並んだら文子の方がちょっと霞んで見えますもんね。(同じく三十路を過ぎてからの文子さんはほんと最高)

舞台は旅芸人の一座が巡業で訪れた三重のある港町。
一座の親方・駒十郎と、親方の摘子で父親の存在を知らない港町の青年・清との交流を主軸に、幅の効いた一座ドラマを魅せます。
親方の連れの女マチ子が、彼の昔の女・杉村春子に妬くという導入がもう最高。

しかし親方を演じた中村鴈治郎のかっこよさったらないですよね。
その後「小早川家の秋」でも主演することになりますが、歌舞伎役者ならではの粋な演技がこれまた役柄にマッチしてて秀逸。

終盤での鴈治郎とマチ子さんのタバコのやりとりは一番の名シーンに挙げられるでしょう。

松竹の小津が唯一大映で撮った作品でもあり、後期のほのぼのとした雰囲気の中にも大人のピリリとした毒っ気と笑いを漂わせ、ラストの雪崩れ込みで極上の人間ドラマに仕上げた傑作。
「灯台」の最初から「列車」の最後まで抜かりなく美しい構図を切り取り、小津調の円熟期を存分に堪能できます。

京マチ子さんもまだまだお元気だそうで、目指せ100歳超えで長生きしてほしいです。
Mikiyoshi1986

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