いの

ミツバチのささやきのいののレビュー・感想・評価

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
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鑑賞した人だれもがそうなるのだろうと思うけど、アナの瞳に釘付けになる。じっと見つめる両の目。純粋無垢といった言葉に押し込めてはならないと思う。澄んだ瞳で、オトナの弱さも脆さも ずる賢さも、多分じっと見つめている。世の不条理さも、生きてゆくことの哀しみも、いろんなことをわかって感じてて、そうして見つめているのだと思う。見えないものや見ようとしないものも、アナには見えている。その真っ直ぐなまなざしを、まっすぐ見つめ返せるオトナでいられるのか。そう問われているような気持ちになって自分が恥ずかしくなったりする。いつか再鑑賞して、ちゃんと心のなかの隅々にまでにこの映画が満つるようになったときに、満点つける気満々です


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メモ

午前十時の映画祭は本編上映前&後に解説動画がついてきた。フランコ政権下、厳しい言論統制のなかで制作された今作が暗喩に満ちた作品だったということは、のちに監督やスタッフによって語られ(*DVDにも収録されているらしい→追記:念のために確認してみたけどDVDには収録されてないみたい。解説のリーフレットは収録されている模様)、今や多くの人の知るところとなったとのこと。
その話を聞いて、わたしは想像した。直接には語ることができないことを、作品に込めるということについて。その思いについて。
公開当時、他国の人たちは、ただただこの映画自体に魅了されたのだという。それはそれでじゅうぶんに素晴らしいことだ。ただ、スペインの人の多くは公開当時に、この映画に込められた意味をわかっていたそうだ。暗喩はリアルタイムでちゃんと伝わっていたのだ。その話にも胸を打たれた。フランコ政権下において、抵抗できずに諦めるのではなく、その政権になじんで暴力的になるのでもなく、新しい歩みをしていこうとする姿。「わたしはアナ」
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