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山猫のmareのレビュー・感想・評価

山猫(1963年製作の映画)
4.0
貴族が描く貴族の物語。誰にも真似できない豪華絢爛の極みに君臨する映画であることは間違いない。全貌を把握しきれない屋敷の華々しい空間に見入ってしまい、3時間の悠久な時を丹念に味わいながら、没入から抜け出せなくなる。脈々と続く名家の栄華、野心溢れるタンクレディがもたらす新時代の予感、眠りにつきたいファブリツィオの哀愁と諦観、いずれ滅びゆく未来を悟って対照的な2人の行く末を暗示する結末まで足元が取られるような余韻に沈み込む。この映画の格を最上級にまで引き上げたのは間違いなくワルツのシーンであり、在りし日の再現とこれからの時代へのバトンを渡すという二重の意味が体現され、華やかさと同時に、公爵と甥の主導権が取って代わられる瞬間を表している。新時代への予感は苦々しい重みを残したままフェイドアウトしていくこの作風は、滅びゆくことに対して無抵抗でしかいられない物悲しさを心に植え付ける。
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