Mikiyoshi1986

春婦伝のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

春婦伝(1965年製作の映画)
4.4
5月24日は昨年逝去された鈴木清順監督のご生誕日。
存命ならば95歳に。

田村泰次郎原作、鈴木清順監督、そして野川由美子のスクリーンデビュー作である『肉体の門』から一年後、
再び田村泰次郎原作の『春婦伝』を鈴木・野川コンビで映画化した反戦映画。

原作を同じくして池部良・李香蘭主演作『暁の脱走』のリメイクともされていますが、
ここではしっかりと従軍慰安婦の熱烈な情愛をグロテスクなまでに表現しているのが特徴であります。

大東亜戦争の最中、八路軍の脅威に晒される中国北部の駐屯地を舞台に、
慰安婦の春美と生真面目な兵士・三上が極限的なラブストーリーを展開。

軍の規律や面目だけが乱行し、慰安婦の人権すら希薄な状況の中で、ひたすら人間らしい生き方を模索する彼らの暗夜行路に救いの光は射すのか。

石仏洞窟や合成を駆使して中国の町を完全再現した木村威夫の美術、
見事なカメラワークで圧倒させる清純美学の真髄。
激しい雨、吹き荒ぶ爆風、爆撃と銃撃の砲火を疾走する野川由美子、日本刀を振りかざす上官をじっと見つめる川地民夫の眼差し。

清純監督自らの従軍経験からも「戦争は"残酷"と言うよりはむしろ"滑稽"だった」と語っていたように、
暗いストーリーからはどこか底抜けた生気が溢れており、一方で全体には大きな虚無感が渦巻きます。

歴史修正に躍起になる文化人もいたり、我々でさえ教育現場では詳細な歴史認識にすら至ってなかったりするけど、
先人の残した意志に触れられる"映画"は今や潰えることのない重要な歴史文化の一つでもあるのです。