春婦伝の作品情報・感想・評価

春婦伝1965年製作の映画)

製作国:

上映時間:98分

ジャンル:

3.9

「春婦伝」に投稿された感想・評価

閃光と砲撃のなか戦場を走り抜けて行く野川由美子を捉える、横移動撮影で泣かない人がいるのだろうか。傑作

@神保町シアター 35mm
マツダ

マツダの感想・評価

5.0
花火みたいな戦火の中を走り抜ける野川由美子、一生忘れられないシーンの気がする
人生ベスト
5月24日は昨年逝去された鈴木清順監督のご生誕日。
存命ならば95歳に。

田村泰次郎原作、鈴木清順監督、そして野川由美子のスクリーンデビュー作である『肉体の門』から一年後、
再び田村泰次郎原作の『春婦伝』を鈴木・野川コンビで映画化した反戦映画。

原作を同じくして池部良・李香蘭主演作『暁の脱走』のリメイクともされていますが、
ここではしっかりと従軍慰安婦の熱烈な情愛をグロテスクなまでに表現しているのが特徴であります。

大東亜戦争の最中、八路軍の脅威に晒される中国北部の日本軍駐屯地を舞台に、
慰安婦の春美と生真面目な兵士・三上が極限的なラブストーリーを展開。

軍の規律や面目だけが乱行し、慰安婦の人権すら希薄な状況の中で、ひたすら人間らしい生き方を模索する彼らの暗夜行路に救いの光は射すのか。

石仏洞窟や合成を駆使して中国の町を完全再現した木村威夫の美術、
見事なカメラワークで圧倒させる清純美学の真髄。
激しい雨、吹き荒ぶ爆風、爆撃と銃撃の砲火を疾走する野川由美子、日本刀を振りかざす上官をじっと見つめる川地民夫の眼差し。

清純監督自らの従軍経験からも「戦争は"残酷"と言うよりはむしろ"滑稽"だった」と語っていたように、
暗いストーリーからはどこか底抜けた生気が溢れており、一方で全体には大きな虚無感が渦巻きます。

歴史修正に躍起になる文化人もいたり、我々でさえ教育現場では詳細な歴史認識にすら至ってなかったりするけど、
先人の残した意志に触れられる"映画"は今や潰えることのない重要な歴史文化の一つでもあるのです。
ゴッホ

ゴッホの感想・評価

3.6
暁の脱走に比べて場面、場面の印象が濃い作品。カメラーワークがとても面白い
miyayuki7

miyayuki7の感想・評価

4.0
野川由美子さんが戦場を駆け抜けるシーン、まんまワンダーウーマンだった。
超面白かった。
戦時中、中国戦線での慰安婦・ハルミの恋物語。ハルミは一旦1人の男を愛すととても情熱的だ。ストーリーはまぁ分かりやすいし、清順監督の映像すごく面白かった。感情豊かなハルミの一途さにグッときた。30過ぎてから涙腺ぶっ壊れてるので本作でもつい涙出てしまった。
う、、、これは、、、野川由美子シリーズの中でも異色というかとりわけ威力のある作品の様に思う。肉体の門と同じ原作者だが、中国が舞台だけに人間の條件の様な重苦しさがあるなぁ、、、見逃す訳にはいくまい。
カメラの動きがとんでもなく面白い
横移動が凄いのもあるけど、トラックの荷台に乗っている川地民夫を遠くからズーム(ドリー?)で映すカットとかも印象的

野川由美子と川地民夫が全裸で名画の様なポーズで抱き合ってるカットのライティングが好きだった
Miver2

Miver2の感想・評価

4.6
いきなり映し出されたタイトルバックと野川由美子の佇まいでこの作品は間違いなく面白い事を確信。
野川由美子演じる主人公の美しさと気骨溢れるその姿、そして何処か影を感じる川地民生の演技がとても見応えあって素晴らしい作品だった。

野川由美子と川地民生の存在感がとても観応えある中で、清順監督のキレのある斬新なその演出やカット割りに思わず釘付けになる。
そしてカメラワークが所々でとても印象的な場面があったのもまた最高だったな。
そしてあの時代の中で強く意志を持ちながら生きるその姿がまた観応えあったなと思う。

しかしながら、戦場での激しさを増すその場所を駆け抜けて行く野川由美子の姿はとにかく圧巻過ぎる。

何処か悲しさや影を落とす所が強く感じられるけど、同時に何処か「美」やその意志を強く感じられる作品でした。
多くの人が指摘するように、爆風の中を歩く野川由美子を捉えた横移動のカメラがなにより至高。全体的に砂と風の存在感がすごくて、人間がどんどん小さく見えてくる。権威をかざす軍人も、密かな反感を燃やすエリートも、過酷さに翻弄される売春婦達も男も女も日本人も中国人もすべてが虚しい存在に思えてくる辺りが、本作の魅力なんじゃないだろうか。
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