真田ピロシキ

リアリティ・バイツの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

リアリティ・バイツ(1994年製作の映画)
3.1
最初の30分くらいは試練。世代が近くて完全に客観化出来ないために90年代前半にはイケてた感覚が今見ると厳しい。これが『何者』みたいな最近の若者事情を今の感覚で描いたものなら高い所から余裕ぶって見れるのですけど。MTV的な、悪く言うと深夜の懐メロコンピレーションアルバムCMのような音楽演出が特にむず痒い。

変化が起きるのはTV局に就職した主人公のリレイナがムカつく番組司会者に嫌がらせしてクビになってから。これ、クビになると承知でやったのかな。不当な解雇に思えてるようにも見えた。それまでのリレイナは卒業生総代になるほど知的で高い目的意識を持っているが薄さを隠せない未熟な若者。若手美人女優として絶賛真っ只中だった頃のウィノナ・ライダーがこのカタログみたいな女を演じているのがその後の彼女の浮き沈みを知っているから面白い。近年は『ストレンジャーシングス』で見事に返り咲きましたね。学歴とプライドが高いために再就職が出来ないリレイナは自分からすると鼻持ちならない奴。なのだがそういうクソ人格は自分にも思い当たる面が強くあるし、何よりも薄いなりにも一生懸命自分の中から生み出した作品を「この方がウケが良いから」と大人の判断でズッタズタに切り裂かれる事への憤りは何も間違っていないと肯定したい。その後、イーサン・ホーク演じるモラトリアムバンドマンと距離を縮めるのは納得行く流れ。この兄ちゃんも俗っぽさを見下した嫌な奴なのだが売れないであろうバンドを歳を取っても続けていそうなダメな自意識が滲み出る。好きだよそういうの。

勝ち組になり損ねている、若しくは最初からなる気もない若者の人間ドラマとしては結構楽しめた。最後のガソリン代900ドルなんて笑える。人の顔色を伺うことばかり考えさせられている忖度奴隷よりずっと良いよ。身近にいて欲しくはないけど。恋愛映画部分は当時の所謂トレンディドラマみたいで退屈でした。話も演出もクサい。せめてイーサン・ホークではなくベン・スティラーの方と結ばれるならまだ面白かったと思うんだがなー