このレビューはネタバレを含みます
末期東ドイツの閉塞感。言いたいこと言えないなんてレベルじゃない腐敗した国で生きなければならなかった人の辛さなんて、僕らが想像できるものではない。クリスタ=マリアはあまりに悲惨。豚みたいな高官は本当クソ。
東ドイツが自殺人数を数えなくなったって下りはゾッとした。これは昔あったけどなくなった国の話ではない。それに対する異論さえも認められないなんて…。それに勇敢に立ち向かった劇作家たちは逞しい。
しかし!!そこではないのだ…この話は優しく悲しいヴィスラーという男の話なのだ。冷徹になりきれなかった結果孤独だった男。娼婦に縋り付く姿、ピアノの旋律に感極まる表情。クリスタ=マリアを救えなかった時の動き。彼にとっては東ドイツがあった時も、なくなってからも人生は辛いものだったのかもしれない。けれども、最後の最後に少しだけ光が射す。演じた俳優さん、これが遺作なのは本当に悲しい。