このレビューはネタバレを含みます
とても感動した。もっと早く観るべきだったな…。
東ドイツが舞台の映画で、予告見てもなんだか陰気な感じがしていたから見逃してた。しかし、本当に暖かな気持ちになる素晴らしい作品だった。主人公の心の機微や変化が丁寧に描かれていて、ラストシーンでは涙が溢れた。
以下はネタバレ…
当初のヴィースラーは冷徹で、人間味のないサイボーグのような男。尋問についての講義のシーンは、彼の人となりをとてもわかりやすく表現している。これまでの人生は無機質で無感動なものだったんだろうな。
しかし、ドライマンを監視、盗聴することで、彼の思想や芸術性に触れ、恋人との営みまでも如実に知ることになる。少しずつ心境が変わっていくところがとても面白い。ソナタを聴いて涙するシーンが秀逸!まるでヴィースラーの心の氷が溶け出したみたい。意を決してファンの振りしてクリスタに話しかけるシーンではとても人間臭くなってる。そして、ドライマンとクリスタを救おうと、危険を冒してまで工作するが…悲劇が起こる。
ベルリンの壁崩壊の後、ドライマンが元政府高官に「なぜ私は監視されなかったのか」と問い詰めるところで、私も気付かされた。そうだ、ヴィースラーは完璧にやり遂げていたんだ。その後、ドライマンは旧秘密警察の資料を紐解くことで、全てを知ることになる。(この時、名簿や写真まで見れるのは疑問。個人情報管理がゆるすぎやしないか…?)
数年後、ヴィースラーが書店で「善き人のためのソナタ」を見つけて、「私の為の本だ」と真っ直ぐに前を見るシーンに感動!鬱屈していた彼の人生に優しい光が差したような素晴らしいラストシーンだった。
これは1984年が舞台の映画ではあるが、今でも思想統制を行っている国は存在するから…。