あさのひかり

日の名残りのあさのひかりのレビュー・感想・評価

日の名残り(1993年製作の映画)
4.4
大戦前から大戦後まで、邸宅の持ち主が変わっても同じイギリスの邸宅で執事を務める男性のお話。戦前共に働いた優秀な同僚の女性に会いにいくなか、思い起こされる記憶と現在(といっても設定は戦後10年くらい)と。

戦前から戦後にかけてのイギリスやヨーロッパの空気を描いた作品としても観ることができるし、彼自身の恋愛や人生の物語を描いた作品としても観ることができると思う。私はどちらかといえば後者として観たような。

職業柄あまりに抑制された感情表現ながら、痛いほど彼の感情は伝わってきた(自転車を見送るシーンの表情すごい、彼女が邸宅出るだけであんなショックなんだ!とか)し、快活に振る舞いながらも秘められたヒロインの感情も痛いくらい(ちゃんと間接的に好き!って言ってるのにその気持ち拾ってもらえなくて切な過ぎるよ!とか)伝わってきた。

前者の見方でも色々思うところはあるけれど、邸宅の絵をいちいちチェックするナチの役人の姿は怖かった。昔、エリザベス女王のジュエリーのドキュメンタリーを見たことがあって、ナチにジュエリーを奪われないよう、本来あり得ない場所にあり得ない入れ物に入れて大事なジュエリーを隠した、って逸話を思い出してしまった。いや、今年は不思議とナチ関連の作品に縁があるんです。

原作は未読なのだけど、物語自体も素晴らしくて、淡々としているのに夢中になって観ることが出来た作品でした。とても良かった。
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