このレビューはネタバレを含みます
シュヴァンクマイエルが描く精神の「自由」と「狂気」について。
あれ?全然かわいくない…(´・ω・`)
今まで見た彼の作品の中でいちばん気持ち悪い映画でした。
ジャンルはホラーだそうですが、個人的に「オテサーネク」が視覚的に恐怖を覚えたのに対し、こちらは心理的に怖い系。
母の死から立ち直れないジャンが目にする精神病棟での治療法。それは、暴れたければ好きなだけ暴れてよし!という「自由」な世界。患者は全員本能のままに行動し、病院というより動物園。(鶏も同居)医師もナースも患者も、出てくる人間がすべて狂っているとしか思えない。
ところが後半、病院の体制が一変。患者に「正しい」治療が施されることに。
狂ってるのは誰か?
狂気とは美しいものではなく、吐き気を催す醜悪なもの。だけど人間は誰もがそれを持っている。見たくないものを2時間見せつけられて恐怖と不快感でいっぱいになるのに、その行く末が気になるという、まさに恐怖の克服である。親切か!
この映画は決して芸術作品ではありません。精神を病んだ際に慌てないためのバイブルです。恐怖とは未知なるものに抱く感情。シュヴァンクマイエルがそれを克服するお手伝いをしてくれます。