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インフィニティ・プールのharuのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
3.5
アイデンティティの喪失。

スランプ中の作家ジェームズは、アイデアを求めて妻と共にリゾートへ。そこで彼のファンであると言うガビと出会い、翌日彼らと共にビーチへ向かう。楽しかったのも束の間、帰りにジェームズは地元民を車ではねてしまい、警察に捕まってしまう。

ブランドン・クローネンバーグの新作。
イケメン長男スカルスガルドのクローンがいっぱい出てくるというので、劇場へ。かっこよかったし、おもしろかったですが、ミア・ゴスが強烈すぎて、そっちに気を取られてしまいました。しかしラストの骨壷を見て、軌道修正。あれ、一人タリナイ…?
この地ではどんな事情があろうと人を殺せば即死刑、情状酌量の余地が一切ない。そこで早速事故を起こしたジェームズは、秒で死刑を宣告される。しかし同時に、彼にある提案が。金さえ払えば、彼のクローンが作られ、クローンが身代わりに死刑になってくれると言う。クローンの死を見届けた後、ジェームズは自らの人生がリセットされたことを喜ぶ。しかし死んだのは本当にクローンなのか?自分は本当にオリジナルなのか?
金持ち嫁のおかげで、罪を犯してはクローンに報いを受けさせるジェームズ。クローンはオリジナルの記憶を持っており、自分をクローンだと思ってはおらず、死ぬときの恐怖も本物。死ぬのは自分ではない、しかしアレは本当に「自分」ではないのか?自らの汚点も含めて「自分」だとしたら、それを消したらどうなる?
日常生活で他人に見せられない汚い部分を隠し、「良い人間」でいるためには、抑圧された悪い部分をたまに発散させる必要がある。割り切れれば良いけど、それも含めて「自分」だと思ってしまう場合は、もう一人の自分と共存するしかありません。
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