TAK44マグナム

完全なる報復のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

完全なる報復(2009年製作の映画)
3.7
ジェラルド・バトラーとジェイミー・フォックスが主演のサスペンス映画。
脚本が「リベリオン」のカート・ウィマーですね。監督としてよりも脚本家としての方が仕事の多い人なんですな。

技術屋で特許をいくつも持っているクライド(ジェラルド・バトラー)は、突然押し入った強盗のダービーとエイムスによって妻子を殺されてしまいます。
2人はつかまりますが、証拠が不十分だったため、有罪率の自己記録を汚したくない担当検事のニック(ジェイミー・フォックス)はダービーと司法取引を行い証言をさせることで、エイムスを極刑にすることに。代わりに、取引に応じたダービーは僅か禁固三年の刑となります。
司法取引を不服とするクライドは、ダービーとの握手に応じてしまう
ニックに対して絶望を感じます。
10年後、エイムスの死刑が行われますが、使用する薬品が取り替えられていたことから、エイムスは苦しみぬいて死ぬ羽目に。更に、主犯格だったダービーもクライドにつかまり、全身を25のパーツに切断されて死亡。
クライドは容疑者として拘留されます。
しかし全く物的証拠がないことから自白がないと裁判で戦えないニックはクライドと取引を行うことになるのですが・・・

というお話です。
つまりは、アメリカの司法制度に喝を入れる映画というわけですね。
我々日本人にはどうにも馴染みのない司法取引という制度ですが、確かに有効な面もあるのでしょう。でも、犯罪被害者から見れば充分な刑を与えることができない場合があるわけで、一長一短に思えますね。
本作の場合、クライドとしては裁判で負けるにしても、正々堂々と司法取引などせずに、ニックに正義の番人としての職務をはたしてほしかったのに、ニックは有罪率ばかりを気にしているかのようにうつるのが問題なんです。
実際は、ニックはそこまで酷いやつということもなく、単純に有罪を勝ち取れる方法をとったまでなのですが、クライドからすれば冗談じゃないぞってわけで。

で、クライドは監獄へ入れたられた後も挑発を繰り返して、次々と事件の関係者に罰を与えてゆくんです。
クライドの復讐は、まるでイリュージョンで、監獄(途中からは独房)に居ながらにして非常にサプライズ色の強いギミック的な殺人を実行してゆきます。しかもとっても派手です。
携帯から爆弾から、果てはロボットまで使いますよ。

どうやって監獄にいる人間が、外で犯罪を犯すことができるのか?という謎がストーリーを引っ張るのですが、この謎解きがメチャクチャとんでもないもので、かなりビックリさせてもらいましたよ。
実は、クライドは○○○○のスペシャリストだった!
実は、クライドは○○の○に○○を○○○いた!
などの衝撃的な事実が判明した頃には、「おいおいやりすぎだろ、この脚本・・・」と、誰もがカート・ウィマーの頭がおかしいんじゃないのか?と疑うことでしょう(苦笑)
個人的には、とっても面白い展開でしたが、さすがに○○には失笑するしかありませんでした。
そんな工作をしていたら絶対に気づかれてしまうと思います。
誰かに見られでもしたらオシマイだし・・・

クライドには感情移入できる上に、その容赦のないプロフェッショナルな仕事ぶりを称賛してしまいたくなります。
やっていることは大量殺人なんですけどね。
ただ、当初は妻子の復讐もあり、司法制度への挑戦も「いいぞ、もっとやれ!」ってな感じで観ていたんですが、中盤で「うーん、この人は別に悪くもないんじゃないかな」と思える登場人物まで殺されちゃったりする頃から、「クライドは気がちがってしまっているんじゃないか」と思うようになってきたんですよね。
明らかにやり過ぎだし、最後に狙う相手なんて、もう自身の復讐には全然関係ないし。
いくら復讐ではなく、司法制度の欠陥を正すためと言ったところで、これでは単なるテロリズムでしかない。
完全に暴走状態です。でも、これにはワケがあると思います。
つまりは、最終的には観客がクライドへ感情移入するのをやめさせているんですね。
そういうふうに巧妙に仕向けられているんではないでしょうか?
単なるヒーローものにはしたくなかったのかもしれません。

ニックは司法制度の不備自体は認めます。そして、二度と殺人者と取引はしないと言い放ちます。
結局は、クライドの勝利なのです。ニックのラストの行動は、司法の限界を如実に認めてしまっているからです。
クライドは、きっと、この為にわざと暴走したのではないでしょうか。
ニックに手をかけなかったのは、彼自身に司法制度の誤りを体現させ、事件の幕引きをさせたかったのだと思います。

アメリカが抱える問題を浮き彫りにさせる、なんとも重たい映画ですが、そこにトンデモ系なサスペンス要素をブレンドして、見事に娯楽作として完成しております。
主演の2人が良いので、多少の粗(一部のトリックプレイはどうやってんだ、等)には目を瞑ることにしました(苦笑)。
ジェラルド・バトラーの容赦なさっぷりに惚れ惚れしたい方にオススメな一作。


huluにて