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スカーフェイスのmayaのレビュー・感想・評価

スカーフェイス(1983年製作の映画)
3.9
滅びの美学なんか糞食らえ、最期は汚くみっともなくとびきり虚しく無意味です。
本作、本物の暴力団関係者にもファンが多いと聞いてずっと気になっていた。思っていたよりも、最初から最後まで虚しさと寂しさが絶えず漂っている映画だった。
ゴッドファーザー2のキューバ革命で時間軸・場所が被っているので、ついつい比較してしまう。マイケルは持っていたものの多くを失ったが、トニーモンタナは初めから何も持っていなかったし、持たざる者は努力しようと持つことはできない、なぜなら持てる者が仕組みを作っているから、という点で、徹底して救いがない。「欲を出すな」は教訓ではなく、抑圧の呪いの言葉だ。
キューバ人移民の彼を見る、白人エリート社会の嫌な空気感と「世界は君のもの!」という、よりによってホワイトアメリカンドリームの象徴パンナムの宣伝文句の対比が、埋められない夢と現実のギャップを突きつけてくる。
個人的に、タクシードライバーを見終わった時と似たしんどさを感じたが、「抜け出せない貧困と、それを上位階層が作ったルールの上で抜け出そうともがき予定調和で失敗する姿」が、あまりにも現実で毎日見ているものだからだと思う(芥川の「蜘蛛の糸」も似たものを感じる)。ただ近年では「もがいた結果いけしゃあしゃあと成功して上位層に嫌がられる」という結果も見られつつあって、「ナイトクローラー 」「ウルフオブウォールストリート」はその点でこのあとに続けて見たい映画です。
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