いののん

ヴァルハラ・ライジングのいののんのレビュー・感想・評価

ヴァルハラ・ライジング(2009年製作の映画)
4.5
類をみない。圧倒的な映像。
吹きすさぶ山岳で、奴隷戦士として殺しあいをするマッツ。強い!強すぎる。他を寄せつけない、圧倒的な強さ。殺し方も画も凄まじい。終始一貫して凄まじい。


異教徒の山岳を越え、神の戦士(キリスト集団)がエルサレムに向かう旅に同行する。でも向かう先は聖地なのか、それとも地獄なのか。わからない。霧に包まれて、行く先が全く見えないように、映画を観ている私もこの映画が何処に進むのか全くわからない。


それでも。私は、マッツについていければ、それでいいと思ったの。映画の間じゅう、主役なのに、ひと言も口をきかないマッツに。片眼で、少し未来を見通せるマッツに。見えないその目に見えるものは何なのか。見えないその目は、神というものに差し出したのか。その代わりに、類い希なる力を身につけたのか。これは、遠い遠い昔の、神々の揺らぎなのだろうか。あるいは、北欧の、遠い昔のご先祖様たちから続いてきた、魂の救済をめぐる物語なのだろうか。


何も語らないマッツに惹きつけられ、私はマッツを崇め奉りたくなる。マッツが神であっても、地獄からの使者であっても、どっちだって私はかまわない。そんな気持ちになる。


旅の果てに見つけたものは、ユートピアなのか。それとも虚無なのか。ひたすらマッツについていったからといって、この映画は、答えを与えてくれるわけではない。


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・十字架のような剣をもつ人たちに対して、斧1本のマッツ。
・石を積み上げていく行為の意味は?
・北欧にはたくさんの神がいる。キリスト教では神はひとりだ。
・今作も赤が象徴的に使われている。赤茶けた朱色のような、強烈な赤。
・あの子は、神の言葉を預かる預言者なのだろうか。
・「憎悪が彼を生かしている。だから無敵なのだ。」

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最後に、「TO OLIVER WINDING オリバー・ウインディングに捧ぐ」というクレジット。レフン監督の父親の名前なのだろうか。さすれば、あの子がレフンで、マッツが父親か。そうすると父が子を守る物語なのかもしれない。父が子に伝えていく物語なのかもしれない。はたまた、父親殺しの物語なのかもしれない。いやいや、ただこの作品を捧げた、にすぎないのかも。考えても、答えを出せないけど、いろいろ憶測してみるのは楽しくもある。

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ほとんどの映画でウトウトしてしまう私が、このほとんど台詞のない映画で、全くウトウトしなかったというのは、驚愕の事実!!

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いや~、こんなのレフンにしかとれない!タランティーノとはまた違って、こんなのレフンにしかできない!さすがギャンブラー、レフン! 本作はきっと「オンリー・ゴッド」などに繋がっていくのだと感じ、オンリーゴッドの円盤買って、コメンタリー付きで再鑑賞して、やっぱレフン好きやわあって思って。この映画についても、全然わかってないっす。わかってないけど、好き。フィルマの評価はめっちゃ低くて、そりゃそうだ、と思うけど、そのいっぽうで肩入れしたくなっちまったので、このスコアにしてみます。(変動するかも)
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