映像が本当に素晴らしい。全編統一された黄色いセピア調の色彩に、独特の浮遊するようなカメラワーク。この映画自体が主人公が催眠術で過去を回想している夢であり、さらにその中で容疑者の行動に自分を同化させていくという捜査方法をとるものだから、もうずっと熱に浮かされたような何が現実なのかわからない映像を見続けることになる。たまに不思議な映像が挟まる、とかではなく、ほぼ全編が不思議な映像で構成されている本作。かと言って現実離れしたシーンというわけでもなく、本当に寝ているときに見る"夢"の感覚に近い。ラストシーンは主人公が「もう目覚めたい」と懇願するが、その感情は完全に観ているこちら側と同調する。
正直、映画として面白いかと言われるとかなり微妙。観ていて何度も寝落ちしかけてしまった。にもかかわらずもう一回観たいと思わせる、本当に独特の映像表現。結局何が事実でどういうストーリーだったのか、推測することができるようで、それ自体には何の意味もないような気すらしてしまう。ラース・フォン・トリアーの処女作にふさわしい、何とも言えない唯一無二の作品。
