戦時中に野戦病院で働いていた藤崎は、手術中の不注意により患者から梅毒をうつされてしまう。
戦争が終わり婚約者に真実を告げられずに結婚出来ないと突き放すも、諦めずに食い下がる彼女。
産婦人科の開業医の父と働きながら、日々1人苦悩し続ける藤崎。
そんなある日、彼に梅毒をうつした元患者の中田に出会う…
三船敏郎が破天荒キャラでもなく、派手な立ち回りがあるわけでもない地味な演技を見せます。
とにかくずっと暗くてなんとも言えない物語ですが、俳優たちが際立っていました。
元ダンサーで望まない妊娠をしている看護婦見習いの峰崎。
最初のすれっからしな印象から、心を入れ替えて生き方を変えていく姿。
「先生は不幸ですのね」
藤崎から病気を打ち明けられる父。
2人が並んでタバコを吸うシーンはもう言葉になりません。
ラストにかけて徐々に感情が吐露されていき、それぞれが抱えていたものが現実となるという着地。
「幸せだったら、案外俗物になっていたかもしれません」
ひとつひとつ、台詞が重く響きました。