猿橋

捜索者の猿橋のレビュー・感想・評価

捜索者(1956年製作の映画)
5.0
当たり前のことを言いますが、アメリカの魂たる西部劇は「虐殺者がなぜか被害者を気取っている」という大間違いが根底にある。というか、そういう「嘘」を信じたい人たちの願望が生んだジャンルなんでしょうな。で、この映画も間違いなくそのジャンルの範囲内にすっぽり収まっている。
なのに、何でこの映画はこんなに特権的に凄いのか。ジョン・ウェイン演じる好感度ゼロの傲慢野郎イーサンのキャラクターそれ自体が、西部劇というジャンルひいてはそれを生み出し必要とするアメリカという国の具現化の域まで達しているからじゃなかろうか、というようなことを思いました。
イーサンがなぜそこまでコマンチを憎むのか、その理由は最後までまったく語られない。たぶん、本当に理由なんかないんだよ。というか、コマンチが悪者でなかったらイーサンの世界は崩壊してしまう、だから懸命に憎もうとする。でも最後、イーサンはコマンチ族と交わった姪を抱き上げ家に連れ帰り、自分は家に入らない。あの時点でイーサンの世界、「虐殺者がなぜか被害者を気取っている」世界は完全に死んだんだと思う。
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