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新座頭市物語 折れた杖の一のレビュー・感想・評価

新座頭市物語 折れた杖(1972年製作の映画)
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自らの代名詞である座頭市シリーズを前にして、勝新太郎はやはり自己破壊に向かう。ヤクザの親玉・小池朝雄とそれをのっそり追い詰める勝新が窓の向こうを横切っていく終盤のショットなんてほとんど怪獣映画みたいで、小池がそう罵ったように彼は「化け物」に近づいているのだった。三隅研次(『御用牙』『子連れ狼』)のセックス&バイオレンスを取り込みつつも、物語はアンチ・ヒロイズム/カタルシスを突き進む。善意は報われず一方通行に終わり、弱い者は踏みにじられ死に追いやられる。しかも主人公の見知らぬうちに。だから、「勘弁してくれ」と情けなく言い残しながら斬られる小池朝雄がいくら素晴らしくったって、誰も救われないのである。勝新スゴいなー。
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