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アメリカン・グラフィティのgengengのレビュー・感想・評価

アメリカン・グラフィティ(1973年製作の映画)
5.0
彩度たっぷりのネオンと夜の深い黒が車に反射して、危なっかしくも高揚する雰囲気に満ちている。全く知らない時代なのになぜか懐かしくて暖かい気持ちになる。そういえば母の好きな映画だった事を思い出して、この時代の感覚が遺伝子に刻み込まれているとしか考えられないし、血は争えんな〜と思った次第でした。

車が中心の時代。映画もほとんどが車内のシーン。そんな時代のコミュニケーションを見て思ったのは、マジ、良い時代〜!仲間と車に乗り込み、夜の街を流す。信号待ちで隣り合った女の子にすかさず車越しから声をかける。うまくいけば、こっちの車に乗り込んで来てくれて、最高の夜。一期一会であと腐れもないイカしたコミュニケーションだぜ。ただ不釣り合いな車に乗ってたりするとけちょんけちょんに貶されるので怖〜

謎のDJでありこの映画のキーパーソン「Wolfman Jack」の選曲は、一度は耳にしたことがある当時のロックンロール。カーラジオから聴こえてくる音楽は、常に場面場面の状況と重なり合う。最近だと『ベイビー・ドライバー』がそれでしたが、当時は斬新な手法として注目されたそう。

群像劇で描かれるエピソードはどれも、どのキャラクターもサイコーなんですが、旅立ちに躊躇しているカートに一番グッと来た。一見頼りない男に見えるが「この街の期待の星!」と言われている所からも世渡り上手な性格が伺える。運悪く不良集団ファラオ団に絡まれても彼らの懐に入り込んで仲間として認められてしまう器用さ。気になった女の子には驚きの手段で連絡を取ろうとする行動力。人並みに悩むことの人間臭さと、決断して行動に移せる器量を持ち合わせているのがすげー良い。古き良きアメリカのイケてるシティボーイ像。
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