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スタンド・バイ・ミーのmorukoのレビュー・感想・評価

スタンド・バイ・ミー(1986年製作の映画)
4.8
映画自体としてはなんの変哲もない少年たちによる冒険物語なのだが、凄まじく良い。

『スタンド・バイ・ミー』に出てくる少年達4人は12歳であるが、この思春期を迎える直前の12歳という値が絶妙。

12歳、他人との比較・劣等感に溺れてしまう時期でもある。
自分の無力さに絶望し、社会との狭間で揺れ動く。
また、それゆえに先の見通せない未来に対しても、明確な視野を持とうとして失敗する年頃でもある。

『スタンド・バイ・ミー』でも、そのような少年たちの葛藤が見てとれる。
彼らは無力である。
無力であることを知っている。
知っているがゆえに、無力ではないことを証明しようとするのである。
この痛々しさ…。

ラストは「懐かしさ」「切なさ」に焦点が当てられている。
主人公(大人になって作家になっているゴードン)は小説の最後にこう記す。

『私はあの12歳の時に勝る友人をその後二度と持ったことがない。
 誰もがそうなのではないだろうか。』

少年達の冒険という小さな視点を、のちに作家として成功した主人公ゴードンが大人目線でそれを見下ろすことによって、ぐっとその世界のスケールが大きくなる。
その大きな視点から眺めたあの冒険からは、切なくも儚い 「郷愁」 が溢れてくるのだ。
実にノスタルジックである。

余談だが、クリス役のリヴァー・フェニックスは本当にいい。
少年ならではの美しさと愛くるしさを持ち合わせながら、カリスマ性のある男らしさも感じられる。
残念ながら23歳で亡くなっているのだが、もし生きていたら…と思わずにはいられない。
あと、若き日のキーファー・サザーランドが観られます。
イケメンやね。

不朽の名作です。
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