玉生洋一

ディープ・インパクトの玉生洋一のネタバレレビュー・内容・結末

ディープ・インパクト(1998年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

この作品では、下記の3人が彗星の飛来によって翻弄される様が描かれている。

●女性ジャーナリスト。仕事の成功に貪欲で、父と確執がある。
 →仕事よりも大切なものがあると気づき、父とも和解。津波にのまれる。
●彗星を発見した少年。自分はシェルターに行くが、かわいい彼女とは離れ離れ。
 →自分の命よりも彼女が大事だと気づき、彼女と再会。津波を逃れ山に避難。
●ベテラン宇宙飛行士。若い宇宙飛行士たちに疎まれている。
 →彗星ミッションで活躍。若い飛行士とも打ち解ける。彗星に突っ込む。

が、詰め込み過ぎでどれも物足りない印象。
なぜかといえば、「変化前→変化後」のキーポイントが三者とも薄ぼんやりしているからではないだろうか。
キーポイントが象徴的にガツンと描かれていれば鑑賞者はそれだけでスカっとするだろう。
キーポイントがはっきりしないとしても、
「変化前→変化後」の問題の原因となるジレンマシーンをたくさん
描いておけば、そのシーンを堪能し、その後にカタルシスを味わえるのだがそれも希薄。

少年はシェルター前で突然引き返すし、ジャーナリストの女性は赤ちゃんを突然奪うし、ベテラン飛行士は突然親しげに白鯨を朗読しはじめるので、ちょっと置いてけぼり感がある。

基本的にいい人しか出てこないのも物足りない。
未曾有の状況で、もっと悪人が暗躍していいし、
ジタバタと惨めにあがく人がいていい。
発見者ということでシェルターにいけることになった少年は
「女にモテまくりだぜ」とはやしたてていた同級生から
妬まれてひどいイジメにあうシーンがあってもいいし
シェルターに同行するための結婚はもっと妬まれてもいいのでは。

少年と少女の恋愛話を極限まで盛り上げるなら
互いの両親の誰かを敵役(交際に反対しているなど)にするのが早い。
その適役がシェルターにいけるかどうか、命が助かるかどうかも見どころになる。
敵役がいれば、ラストで恋愛が成就する様に盛り上がりが生まれるのでは。


不倫スキャンダルだと思って追っていたネタが
実は彗星衝突だったというくだりはなかなかおもしろいので
これをもっとひっぱってほしかった。
ジャーナリストたちは、「衝突をいち早く察知してシェルターに逃げ込んだ一部の権力者たち」を追求するという役割にすれば、終盤までスリリングな立ち位置でいられたのでは。

ベテラン宇宙飛行士は、序盤であれだけバカにされたのだから
実際のミッションでは「ピンチになったときに、自分をバカにした若い飛行士を見殺しにするか悩む」といった盛り上がるシーンを入れないともったいないのでは。
「結局身を犠牲にして救う」という展開にすればいい話。
「意図的に命綱を切り離す」という展開にすれば復讐話。


※BS4K民放。エンドロールが全部あったので多分ノーカット。