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欲望の法則のpikaのレビュー・感想・評価

欲望の法則(1987年製作の映画)
4.0
「パッド・エデュケーション」のプロトタイプのようなアルモドバル監督らしい要素に覆われつつ核はまた違ったベクトルの愛の物語。
同じ人間、同じ世界の中で「区切り」を付けたのは人間で、好きも嫌いも正も否も人間が決めた価値観の中に存在していて、それがあることで必ず正反対のものが導き出される世の中で、「区切り」を捨て、固定概念の壁をぶち壊し、愛も憎も純粋も不粋も純潔も肉欲も全て、分け隔てなく曖昧に存在していると描写することの凄さがある。

LGBTも性描写も特別でなくごくごく普通に当たり前のように映し出し、多種多様なキャラクターが人間味溢れんばかりに魅力的だから、灯台下暗し的な「色んな価値観の人間が色んな行動をする」という当たり前のことをスーパークールな演出でアッサリ描いてしまって、独特奇異な価値観ですら「さも当然」と言わんばかりに観客も価値観を共有できてしまう。

先が読めないほどにドラマが面白い上、描写も画面のセンスも小粋な演出も独特で魅力に溢れているし、キャラも役者も監督の意図を十二分に発揮するリアルな生々しさを見事に体現していて素晴らしい。
アルモドバルという看板の名店へ赴き、ここでしか食べられない唯一無二の料理を味わい尽くせた満足感!
エンドロールの最後に感謝と共に語られるメッセージが粋!
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