桃子

籠の中の乙女の桃子のレビュー・感想・評価

籠の中の乙女(2009年製作の映画)
4.3
「海は革張りのソファ」

究極クラスの不思議ちゃん映画である。風変りを通り越して、気のふれた人が作った映画なのか?と(ちょっと)思ってしまうくらいのレベルだ。
今まで数々の不思議ちゃん映画を見てきた私だが、この映画のイッチャッテル加減にはかなり驚いた。突き抜けている。普通ではないレベルが普通ではない。ここまでくると、脱帽して地にひれ伏すしかない。
海は革張りのソファ、高速道路はとても強い風、遠足は堅い建築資材で建物の床に使う物、カービン銃はきれいな白い鳥、プッシーは大きな灯り、ゾンビは黄色い小花。親が子供に単語をこのように教える家では、「犬歯が抜けたら自立して家を出ていってもいい」ということになっている。
子供たちはまさに「犬」である。猫は外敵で、四つん這いになってワンワンと吠えて撃退しなくてはならない。親に徹底的に躾けをされ、言うことをきかないと思い切り頭をはたかれたりして罰を受ける。庭で母親が投げたものを走っていって取ってきたりもする。
シュールでブラックなコメディ映画に違いない。風刺の仕方が極端で独特すぎて、常人についていけないところがあるだけのことだ。見ていると、監督が何を言いたいのか、だんだんわかってくる。エキセントリックな方法で問題提起をしているのだ。それがわかると、爽快感も味わえる。
ギリシャ映画を見るのは初めてだった。ギリシャ語は全くわからないけれど、聞いていて違和感を感じることもなかったし、居心地が悪いことも全くなかった。前に書いたことがあるかもしれないが、この歳になって初体験があることは素晴らしい。映画万歳!である。
シュールな映画を見ている時の高揚感を1度味わってしまうとヤミツキになる。そういう映画である。不思議ちゃん映画が苦手な人は絶対に見ないように。
桃子

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