ぽち

墨攻のぽちのレビュー・感想・評価

墨攻(2006年製作の映画)
3.0
もっとお堅い話かと思ったら、普通にファンタジー・アドベンチャー風の作品で楽しめた。

墨子、墨家などの事は全く知らなかったのだが、ここら辺の知識があるともっと入り込めただろう。

小説を漫画化した物を映画化という事で、小説とは違う内容のようだ。漫画は絵をちょっと見てみたが、昔の大友のような絵柄で作品内容と合っている。

主役の革離というキャラをはじめ歴史に名を残している王や将軍以外はすべてフィクションのキャラ。漫画や映画では主役が天才的な策士と設定されているのだが、その天才ぶりが今一つ描き切れていないのが残念。

それとロマンスパートが中途半端で、どうせ入れるならもうちょっと色を付けてほしかった。

制作年代を考えればしょうがないがCGが浮いているのがチープ。でもお金をかけたセットやエキストラは壮大で見ものだ。

ラスト付近がかなりグダグダになってしまったのと、梁城の城主の梁渓がまったく成敗されないのがエンタメとしては物足りない。

「平和を説き、戦争で助けを求められればあらゆる手段で依頼者を守るスペシャリストの集団」という魅力的な設定だが、シリーズ化とか他の小説、映画などで題材にされていないのが不思議だ。

あ、でももしかしたら中国では有名なのかな。日本の忍者みたいに世界でブレイクできる設定だと思うのだが・・・


余談。
映画なのでいい加減な倫理観の、外見だけ整えた薄っぺらい正義ではあるのだが・・・
実際に残っている開祖である墨子や、その著書。それに墨子の没後に一大勢力となった墨家など紀元前400年頃の話だそうだ。

この年代に驚きを感じてしまった。
さすが中国・・・って感じかな。

「紀元前」と書いたが、そう、キリストが生まれる400年も前の話だ。
で、そのキリストだが、今では宗派が細分化して、お互いに争いまで起こし、戦争のネタとなっている。
その教義内容も宗派により違い、大元のキリストが残した教義など今となっては分からない状態だ。

それに比べて今作の墨子の残したとされる著書や、墨家のことなどもかなり信ぴょう性が高い。不思議だ。

まぁ、たぶん墨子の教義が政治に利用されたり、ビジネスとして利用されたりせずに、墨家自体が滅んでしまったので、純度の高い状態で残ったのだろうな。
ぽち

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